2002年オーストラリア自転車ワールドカップ第1戦・クーマと
ステージレース「ツール・ド・スノーウイ」、
ニュージーランド自転車ワールドカップ 第2戦・ハミルトンの
日本個人参加チームのマネージャー兼カバン持ち日記
ニュージーランド里帰り編!!


3月7日(木曜日)チョット曇っている。けどココロは快晴!

今日はニュージーランドへの移動日。
西 加南子チャンと坂井田 理沙チャンは、オーストラリアのクーマで同じホームステイ先に残るのでココで一旦お別れ。
日本で又の再会だな。まあ、ホームステイ先のホストファミリーに、ちょくら会ったが凄く気さくな良い家族で安心ですな。
で、連戦のためにニュージーへと向かう唐見 実世子チャンと嶋田 広子チャン、そしてメカ成田サンとオイラはキャンベラ
からシドニーを経由してニュージーランドはオークランド空港へと旅立った。

朝の便に乗ってオーストラリアよりはプラス2時間の時差を経てニュージーに夕方到着。空港は相変わらずであったが
案内された出口がいつもと違う方・・・ああ、もしかしたら知っているスタッフのお迎えがなくて一緒に移動した他のチームの
選手と同じ移動なのかな、まあ贅沢も言ってられないし・・・などと考えつつ荷物を降ろしていた。そしたら出口の奥の方か
ら見覚えのある顔が!「ピーターさんだああ!!」フジノ、ダッシュ!あんど抱きつきでクルクル回る!!
いつもどおり周りの人たちの目はテン。でもいいもん、私にとっては久しぶりの里帰りなのだし!フフフ。

荷物を運び、1人1人の紹介も済んで、さてホテルまで移動・・・となったら「もう1チームくるから待ってね」とのこと。
ノドが乾いていたので空港内の私の好きなカフェでお茶しつつ時間をつぶす。そこにピーターも合流してイロイロと今までの
ことを話した。フジノと前回のニュージー・メンバーだった唐見チャンから3年前の遠征選手たちの今の消息とかを沢山話し
た。そう言えば1回目のニュージーには8人、2回目には6人の選手が遠征しているのだなあ。そのうち今回まで2回来た
のが唐見チャンと他に2人。3回とも来ているのは私だけか。私は一生ニュージーには頭が上がらないからしょうがないが
(詳しい理由は後で書きます)。そして後から来たチームも無事に到着して出発!となったが、ピーターさんの運転する機
材運搬用のトラックに2人乗れるというので私と唐見チャンが乗ることに。そしてココからいつもの「なぜかトラブル起こすフジ
ノ」の力が動き出していたとはこの時点では予測もしていなかったのだ。ジャーン。


「選手を乗せたバスはゆっくりだから、追い越して先に着いちゃおう!」とかいいつつ、観光案内付きの楽しいドライブが始ま
る。唐見チャンは今年1月末からメルボルンにホームステイして英語が上達していたので一緒に会話に加わる。
途中でテレビの話になった時、「モンチィー・パイソン」の話題に行ったのには驚き!それに盛り上がりワーワー騒いでいたら、
「ドカン!!」。ナニ?どうした?!「・・・タイヤがパンクした」えええ?「でもスペアがあるから大丈夫」良かった。3人で車か
ら降りてパンクしたタイヤを探す。パンクしたタイヤは丸坊主状態。こんなので走っていればパンクするわなと思いつつジャッキ
を見たらトラックに似合わない小さいモノ。でっかい体のピーターさんが狭い車体下にもぐって取りつけるが一向にジャッキア
ップしない。やっぱりなあ。辺りはだんだん暗くなってくる。しかも場所が空港とホテルまでのちょうど中間地点で何もない所。
自分たちで直せないのが判ったのでピーターさんが主催者のコックス氏経由でロードサービスを呼んでくれた。寒くなってき
たので選手の唐見チャンは運転席に座らせて待ってもらい、私はピーターと2人で「ペットボトル・ラクビー」をして暇つぶし。
30分してやっとロードサービスが来て5分で直してくれた。唐見チャンは、その手際良さにカンゲキして「サンキュー」と言って
ロードサービスのお兄ちゃんに握手していた。その気持ち分かるわあ。

ホテルに到着したのは夜8時過ぎ。選手バスは6時頃には着いたそうで皆心配して待っていてくれた。しかも夕飯まで食べ
ないで待ってくれたのだ。スグにピーターも交えて夕食。そこに久しぶりに、ニュージーランドのレース主催者・コックス氏に再
会。しかも向こうからワザワザ見つけに来てくれた。で開口一番「また、ずいぶんと時間がかかったね、お疲れ様」。そこです
かさず「何か私がいるとトラブルになっちゃうみたいで」と言ったら笑って「そーか、おまえが(体重)重すぎたからパンクしたのか
!」と言われた。そしたら「体重が原因だったらピーターだよ!」って皆でフォローしてくれて一同大笑い!!
5年前の1回目のニュージー遠征フジノは選手として参加。レース1日目にコース外れて迷子になり、始めての土地をさま
よいながらゴールに3時間オーバーして到着。その時カーラジオ等で捜索が出ていると知って「こりゃ、絶対に怒られる!し
かも日本人が2度とニュージーの試合に出させてもらえなくなる!」と思い動揺しながら主催者に会ったら「今日のレースは
90kmなのに110kmも走ったのか!」と笑顔で慰められた。さらに最後には「来年も必ずニュージーに来るように」と言わ
れてコンパスを特別賞としてプレゼントされた。その時から私はニュージーでは頭が上がらないし、スタッフもイロイロ心配して
面倒見てくれているのだ。感謝です。迷惑かけてスイマセン。

明日とあさってはオフなので選手にはリラックスしてもらいながらスタッフはこちらで必要なものを調達して準備だな。
しかも明日はニュージーの「影の日本チームスタッフ」マーティーさんも合流だ。
なんだか賑やかになってくるぞ。今夜は選手ともどもゆっくり寝ましょう。ングー・・・・・・。

3月8日(金曜日)快晴!しかも週末だのう。

今日はオフ1日目。しかも「花の金曜日(古)」というヤツである。そこで久しぶりに昨夜は目覚まし時計をかけないでいた。
おかげでグッスリと快眠アンド寝坊。でもOKなのだ。8時過ぎにゆっくり朝食。このホテル(正確にはモーテル)は規模は大き
くないが料理がおいしい!元「必殺料理人」成田サンも「今までの宿の中で一番ウマイ」と絶賛!その中身は朝はトース
ト(自分で焼く)にシリアル、フルーツのコンポートにボイルドとスクランブルの卵、ぶっといソーセージ、ベーコン、そして賛否
両論だった「ベイクドビーンズ」に「スパゲッティーニ」がバイキング形式で並ぶ。で、この「ベイクドビーンズ」と「スパゲッティー
ニ」はイギリスの伝統料理。某イギリスのロックバンド・オアシスのボーカルのリアム・ギャラガーがベイクド・ビーンズ大好きで
アメリカのツアー中にはコレが食べたくてホームシックになるとインタビューで言っていたな。それでファンの娘が「そんなにオイシ
イ物なのかな」と思って本場イギリスで食べたら・・・マズかったと言ってたな。しかし私は言いたい!「うまい!!」こんな調子
で何でもおいしいおいしいと食べるから「オマエは味覚がヘン!」と言われるのかね。でも・・・ホントにうまいのよ。特にスパ
ゲッティーニはアツアツを焼きたてのカリカリトーストにたっぷりかけてナイフで切り分けつつ食べた日にゃ・・・うっまああ(グラハ
ム・カーのまねで)!!ゼヒご家庭でお験し下さい!って日本じゃ売ってないんだ。まあ、しばらくはコレにありつけるゾ。

昼頃にかけて前回、同じワールドカップのコースを走った経験のある唐見チャ
ンを先導に広子チャンも軽く練習に。成田サンは部屋の整理と機材チェック。私
はオーストラリアで撮り切ったフィルムの現像上がり(現地で焼いた)をチェックして
記事の内容を頭で練る〜。でも、しばらくして「新聞読みてえ」と現地の新聞を
手に入れて早速「エンターテイメント(芸能)」のニュースチェックに切り替え。ここ
で、私の大好きなTOOLというアメリカのバンドがニュージーでライブをやるという
情報を発見!!たいていアメリカのバンドがオセアニアに来る時は日本にも事前
に来る・・・という事は来日するぞ!でもネットが繋がらないから調べようがないな
・・・と日本に帰ってから調べることにする(しかし後日、うれしい大逆転があったの
だ。詳しい後日談が知りたい方はココへ)。

のそのそと部屋が片付いた頃にタイミング良く選手たち無事、ご帰還。そこで広子チャンが「ねえ、モーテルのプールに行か
ない?」とのお誘い。結構暑かったし、泳ぐのは大好きなので二つ返事で支度してプールへダイブ!しかも写真まで撮る(
左の写真。ちなみに姉妹ではない)!二人揃ってワイワイ泳いでいたらナント、プールが食堂のまん前で日本ナショナルチ
ームの選手たちにはしゃいでいるところを目撃されてちょっと照れる。中村 珠藻チャンには写真撮られてしまったわ。うふ。
その後に昼食を取って1人で部屋でゴロゴロしていたらピーターさんが「何処か行きたいところないかあ?」と尋ねに来てくれ
た。早速近くのスーパーへ選手の「欲しいものリスト」を持ってゴー!でっかいスーパーでニュージーのパパのピーターと友達
とで3人でお買い物。そしてルンルンでホテルに戻った私を待っていた人がいた。「マーティーさんだああ!」大騒ぎで又みん
なをビックリさせてしまったが3年ぶりだもの(以下略)。

夕飯は肉のロースト(日によって牛だったり羊だったりする)にソース。付け合せにじゃがいもやサツマイモ(ココではKUMARA
という)。たっぷりの生野菜、ゆで野菜に海老のカクテルソース、そして私の好きなニュージー名産「マッスル(ムール貝のこと
)」などをめいめい取り分けてパンとスープ。これを私達4人の他にピーター、マーティーも混ざって思い出話をしながらいただ
く。5年前も4年前も違う宿だったけど変わらないやさしさとおおらかさで私たちを気遣ってくれることに感謝である。

明日は試合の直前準備に監督会議への出席。今回のチームエントリーは揉めたから大丈夫かなあ。うーん。

3月9日(土曜日)はれ。しかし明日が心配な午後曇り。

今日はオフ2日目。でも試合の前日なので午前中はコースを選手は実際に自転車で走りながら、私と成田サンはピータ
ーに車を出してもらって周回をしながらポイントをチェックしていく。そういえば、このコースで私も4年前にワールドカップを走っ
たのだなあ。ホントにオイラって「怖いもの知らず」だよな。だって同じスタートに世界戦のチャンピオンとか各国のチャンピオン
とかいるんだよ。その中に「日本の代表」でスタートしている中にいたのだから・・・あ、私だけはバカの代表だったのか。なっと
く(オイ)。もちろん、完走なんて出来ませんでした。それはそれは凄い「スピードコース」なのだ。

1周が○○kmを○周回(計107km)するコースは全体にはフラットだがダッシュ力の必要な急な坂があったり、コーナーが
多かったりとテクニカルなレイアウト。特にイヤらしいのが下りきって直角に曲がった後に急な登りを登る所!下りの勢いをま
ったく反映されない、いわゆる「アタックポイント」としても使われそうな場所。ココでいかにダッシュが効くかが今回のレースの
ポイントだろーな。メモメモっと・・・。

午後は成田サンと唐見チャン、広子チャンとで外で昼食を取ってから昨日のスーパーで買い物。私は自分用のお土産に
チーズおろし金(300円ぐらい)を買っていく。これはいろんなカタチにチーズをスライスしたり削ったり出来る便利なグッズ。
加南チャンがオーストラリアで使っていたのを見て「いいなあ」とか言ってたら「コレ、スーパーで売ってるよ!」といわれて買っ
たのだ。これで塊でチーズ買っても色んな料理で手軽に使える。ちなみにチーズはオージーもニュージーもうまいですぞ。

3時から監督会議。ダッシュで会場だと思っていた場所に行ったらモーテルのオーナーから「隣りだよん」と言われて慌てて移
動。着いたら会議が始まる寸前だった。時間の事はオージーは10分遅れはザラだが、ニュージーは割とオンタイム(時間キ
ッチリ)な事が多い。仕事の進みは、どちらの国もベリー・スローリーだがな。ふふ。空いてる席が1つだけあったので「一番
前の列だからヤだなあ」と思いつつ席に着く。そこで記録の準備をいそいそとしながら隣りはダレかいな?と思い、ふっと顔を
見たら・・・「ああああ!!」や、ドモドモ久しぶり!!ってないつもの調子。その人は以前日本で毎年10月に開催される
ジャパンカップという大きいロードレースで3年前に会った人だ。で、どんな人かと申しますとUCIのドクター(医者)なのですよ
。私がそのジャパンカップの試合後にドーピング検査対象選手になって検査の手続きをしていた時、1人外人がいて気にな
った。普通は「ダレかな」と思うだけだろうが、スグに話し掛けてしまうのが私。「UCIの役員の方?」「そうです」「どちらからい
らしたの?」「ニュージーランドです」「私、ニュージーの試合に出たことあるんですよ」「そうですか。どんな試合ですか?」。
この時点でヤバいと思いながら「ストリート・スキルスです」と答えた途端「??」という顔になってしまった。

その時はつつがなくドーピング検査も終了したがそのUCIの役員が怪訝そうな顔をしていたのが唯一気になった。そして夜に
招待選手(ジャパンカップには国内外の有名選手が大勢参加する)の泊まる某ホテルへ検査の際、提示出来なかった選
手のライセンスを見せにアノUCI役員の所に行ったら、向こうからすっ飛んできてこう言ったのだ。「ゴメン!思い出したよ。キ
ミってニュージーの試合中に迷子になった日本人選手じゃないか!!」あああ、思い出さないで欲しかったよお。でもおか
げで名刺までいただいて、次回のニュージーの試合には行くことを約束して別れたのであった。それから3年・・・。

彼は私の顔を久しぶりに見るなり「いやあ、長い時間が経ったねえ」と言ってくれた。そして監督会議の間、ずっと細かく説
明を加えてくれて特にドーピングに関しては今回だけのローカルルール(対象選手に役員が書類を持って来てくれる)を何
度も説明してくれた。感謝ですう。でも、この監督会議でエラいことが2つ判明した。1つは私達「日本個人参加チーム」は
日本ナショナルと別のチームでワールドカップに出場すること。普通は国別にするワールドカップでよくこんなことが出来るの
か?そしたらもう1つの理由でそれも分かった。個人単位で来ている選手と一緒になって私達は「インターナショナル」という
チーム名で出場するのだ。このメンバーが濃い(笑)。まずウチラのリーサルウエポン、唐見チャンと広子チャン、それにスイス
・ナショナルチャンピオンのプリスカ・ドップマン、そしてオージー選手で沖選手が所属する同じフランスのチームにいるブリジ
ット・エバンス。そして「急遽ハンカも一緒になったから」・・・。え?!アノシクロクロス世界チャンピオンのハンカ・クッパファー
ナゲルが一緒!まさかキ○ガイ監督トステンも一緒かよ?!私も荻島 美香チャンのようにいじめられてしまうのか?ガー
ン。

でもそれは取り越し苦労でしたわ。トステン来なくて彼女はたった1人で来たのだ。ちなみにトステンは彼女のダンナ。オカシ
イぞ。フジノ、その辺聞きたかったが・・・ヤメた。それにそれどころじゃあなくなったのだ。だって選手がそれだけ「濃い」という
ことは着いてきているスタッフも「濃い」というか「うるせー」というか「ワガママ」なんだよお!スイス・チャンプの彼氏?トーマ
スは「オレが(チーム車を)運転する!」と言って譲らないし、その一方でバーバラのダンナのポール(コイツが映画監督のテ
ィム・バートンにそっくり)が神経質なヤツで「ボク達のアイスボックスは使わせない」だの言いたいことをワーワー言い出す。
困ったフジノだって成田サンをチーム車に乗せてメカニックをやって欲しいし、どうしよーと思っていた。ここでまたもや広子チ
ャンが上手に通訳してくれて、おかげで私も1歩も引かず「コレはこうしよう!」と言えたのでナントか解決。でも明日の本
番が心配。

万が一のためにピーターにも相談して「チーム車に乗せてもらえなかったらマーティーに連れて行ってもらう」という手筈を取
っておいてもらった。日本特別チームは相変わらず結束は固いですね。ぞくぞくとスタッフも到着して皆でご挨拶などで一
層、賑やかな夕ゴハンになった。で、明日は本番。早めに休んで備えましょう。

え?!明日は私が迷子になった時発見してくれたペーターケン一家が来るの!うわー楽しみ!!

3月10日(日曜日)日頃の行いが良かったか?!予報の「雨」に反して曇り。よかった・・・

今日はワールドカップ第2戦ニュージーランド・ハミルトンの試合当日。
スタートは9時半なので6時には起きて朝食。今日は日曜日だし、新聞にも大きくレース告知が出ていたから観客が多い
だろうな。しかも広告に「レースの優勝者を予想して賞金をもらおう!」とか書いてあった。へえ、まるで競輪だな(違うか)。
まあ、日本でも野球中継で「8時ジャストに投げている投手がダレか当てたら旅行プレゼント」とかやっている、ソレに近い
感覚。これ、日本でやってもヨイんでないかな。そんなにべらぼうに高い賞品でなくてもいいんだから、ね。

で、私は朝からバタバタしていた。まず、チームの車に乗れるか、氷は用意出来るか、チーム車に成田サンを乗せられるか
。結局、ナントか嶋田サンも交えて説得してチーム車の運転はスイス選手・プリスカの彼氏トーマス、補給は私とブリジット
のダンナのポール、成田サンはチーム車にスタートから乗ることに決まった。氷は会場に行く途中にガソリンスタンドで入手。
出発は8時。段取りは決定。ほおおおおお(長めのため息)。良かったあ。

選手の使用メカを再度確認してスペアのリムを積む。国によってシマノだったりカンパリニョーロだったする。シマノ使用の選手
はカンパのリムは使えない。逆も同じ。今回は唐見チャンとプリスカ、ブリジット、ハンカがカンパ、広子チャンがシマノ。
このことをスタッフ皆で確認。あと、補給班で選手のボトルを確認。そして会場に出発。選手は近いので自走で各々移動
してもらう。 天気は昨日の予報では雨だったが、今は何とか曇りにとどまっている。

チーム車はトーマスが運転しているのだが、自分の持ってきた音楽テープをかけているらしい。それが最新のヒット曲なので
気になって「これシャキーラ?」とか聞いたら「オマエ、こーゆーの好き?」とかいう感じになって厳しい顔が一気にほころんだ
。うーん、洋楽が好きで選手やスタッフとのコミュニケーションで助かることって意外と多い。
おかげで会場に着いてから選手の写真を取材を兼ねて何枚も撮ったが、プリスカを撮る時もトーマスは快くOKしてくれた。

会場では各チームスタッフが場所取りをして良い場所で選手を休ませている。私達も程よい日陰の取れる、スタートと補
給に近い場所を取る。あとは皆慣れた動きでイスをカッパらってきて選手を座らせてスタートマッサージをする。
私は準備が落ち着いてから、コーヒーを差し入れ。 朝のうちは肌寒いので暖かいのが良い。

出走サインの呼び出しがかかる。その脇でチーム車の無線をチェック。そこにマーティンが通って手招きされた。「どうだ、問
題なくやっているか?」「うん、大丈夫。ありがとうね」気にかけて寄ってくれたのだ。サンクス!!
ピーターもご自慢のバイクにまたがって登場。彼はいつもレースでテレビカメラのクルーを乗せてレースの先頭を走るのだ。
まだ手が空いているようなので一緒に写真を撮る。これがステージレースだとレース後の帰りに日本チームでジャンケンして
勝った人はピーターのバイクの後ろに乗って移動出来るのだ!来年はそうなるといいなあ。

さらにサターンのチームにいるオージー・ワールドカップ優勝者のペトラの写真を撮ってきて!という加南チャンのリクエストで
チームにお邪魔する。私がシャッターをきっていたらチームシグネイチャーのエレンが来て、ちょっと話をする。そこで「日本の
女のコでヨーロッパまで試合をよく見に来るコがいて、ベルギーの試合にそのコと2人でチーム車でレースを猛スピードで移
動する選手を追いかけて凄いスリルで面白かった」という話を聞いた。「アレ?そのコなんて名前?」「Mっていうコよ」 「・・
・私、そのコ知ってる。というか友達だわ」「ええええ!!」。かくして2人で出た結論「自転車界は世界的に見ても、 かなり
狭い(スモールワールド)」。M.Sサン、エレンが「よろしく!!」とのことでっせ〜。

スタートコールがかかる。そろそろ出走だ。チーム紹介が始まった。まずは日本ナショナルチーム。沖サンはこーおー会場の
フラットコースは得意だろうから期待できるぞ。そして「インターナショナル!!」広子チャンと唐見チャンが登場!唐見チャン
にはオージーでの無念を晴らしてほしい。そして、とにかく皆に無事、走りきってほしい。スタート・ゴール場所には沢山の観
客が集まっていた。凄い熱気・・・。 

9時半、スタート。1周6.3kmのコースを17周、107.1kmを走る。スタートは58人。
1周目、12人が集団から抜ける。まあ、軽い揺さぶりだろう。
2周目、AISとサターンの選手が2人抜け出す。その後ろ20秒でデカイ集団。2分後のところに唐見チャン!!
何かあったのか?その後には2分遅れて春恵チャン。オージーで試合中に倒れた直後では辛いだろうに・・・。
3周目、ニュージーナショナルの選手と、さっきのAISとサターンが先頭、その後15秒後のメイン集団にいた広子チャンが
唐見チャンが落車したことを教えてくれる。何処で落車したんだ?!そんなに危ないコースだったかな。私はこのコースで集
団で走ったことがない(なさけない)のだが、もしかしたら急に狭くなったりしている所もあったハズなので集団にいると危険な
箇所がある可能性はある。
4周目、先頭の3人は変わらず、メインも同じ。広子チャンが集団から遅れて1分30秒差の位置。唐見チャンもかろうじて
残っている。
5周目、逃げの3人はつかまって先頭はメイン集団のみとなる。
6周目、大きい集団のまま、動きが若干遅くなり牽制状態に入る。ココで唐見チャンがラップアウト。
彼女にどうしたのか聞いたら「集団の前にムリに出ようとしたらコースの中央分離帯にあったカラーコーンにぶつかって落車し
てしまった」とのこと。ケガは肩を擦りむいただけで済んだが、このコースはスピードコースで一回集団から遅れると余程のこと
がない限り、完走は出来ない。「テクニックが足らなかった。もう少し落ち着いて集団の位置取りをすればよかった」と言う。
今回は不運が多かった彼女。でも、この経験を忘れずに今後のトレーニングに反映して強くなって欲しい。お疲れ様。

7周目、変わらず。動きが変な落ち着き。ボチボチ動きが出そう。補給班、補給地点に移動する。これから残り3周まで
補給の作業に入る。1周がだいたい10分で来るのだがその間ポールが「プリスカの彼氏(トーマス)はワガママ」だの「アノ
選手(名前は伏せる)は走りがなってない」だの陰口が炸裂!この性格は始めて知り合った去年から知っているので、適
当に聞き流す。暗いオタクヤローは好かん。ポールは親切なトコもあるヤツなのになあ。
8周目、いよいよ女王ハンカが動く。ハンカを含めたAISとニュージーナショナルともう1人が集団から抜け出す。集団との
差は10秒。
9周目、一気に10人の選手が集団から逃げ出す!スピードも上がってきた。その10人の中に日本の女王サマ・沖サンも
いるぞ。プリスカもいる。そのプリスカから補給のサイン!手が滑らないように冷やしたボトルをハンドタオルでぬぐってから渡し
たらポールが「おお!とてもナイスなことをするな」と感心していた。しかし、日本の補給ではコレやってる人多いよ。日本って
こーゆー細かいことは丁寧にするからね。成田サンも知っていたし。うーん、日本の伝統芸?!ココで珠藻チャン終了。
10周目、またもや逃げが集団に吸収される。さらに広子チャンがラップアウトで終了。お疲れさま〜。今回は良くがんばり
ました。あとは集団への食らいつき方を覚えて自分のパワーを無駄なく試合で発揮出来ればOKだよん。
11周目、3人逃げ、でもスグに集団に吸収。スピードも少しだけだが落ち着いている。
12周目、4人逃げ、でも又スグに集団に吸収。
13周目、AIS,サターンとハンカが集団から逃げる。ココで歩チャンは終了。
14周目、プリスカが1人で集団から逃げている!ココで動くのは「?」な感じ。トーマスの指示なのか、大丈夫か?!
15周目、再び集団が1つになった。展開が読めない!補給班、撤収。

16周目、ゴール前に移動してカメラを構える。集団は1つのまま、完全にスプリントで着順が決まる展開になった。
集団内での沖サンの位置は絶妙。しかしサターンが完全に「着き位置」にいる。やばいぞ。
ゴール前、完全にダンゴ。そこに競輪を見るような「差し」でゴールが決まった!瞬間はファインダーから確認。オージーでも
勝ったサターンのプリスカが2連勝!試合の中盤で集団から時々逃げていたサターンの選手・キンバリー・ブルックナー(アメ
リカ)はアシストというか、捨て駒として集団をコントロールして最後にプリスカを行かせたのだ!今回はサターンの組織力と
それに答えたプリスカの完全勝利。素晴らしい。2位はAISのマーガレット・ヘルスリー(オーストラリア)、3位はハンカ!!
さすが取るトコでは取るねえ。シロウトじゃあないねえ。感心。沖サンは15位と健闘。これだけ安定した成績なら来期のフ
ランスチームでも活躍は保証大でしょう。プリスカは10位(焦ったか?)、ブリジットは23位だった。

ホテルに帰って唐見チャンはケガの場所を冷やして処置、広子チャンは
スグに午後の飛行機で帰国なので荷造り。なんでも休暇が12日までで帰
国して翌日には教壇に立たねばならないとのコト。センセイは忙しいねえ。

手の空いた先から、どんどん荷造りを手伝ってホテルの出発時間がきた。
準備はOK,左の写真のようなアメリカンなバックパッカーのような状態に
なって元気に帰路へ出発した。「本当に楽しかった!!」と言ってくれた彼女
に感謝、そして本当にお疲れさんでした。また走ろうね!!

無事に彼女を送り出して、今度は自分達の帰国準備にとりかかる。
この後は私は日本へ、成田サンはさらに1日遅れで日本へ、そして唐見チャ
ンはメルボルンのホームステイ先に戻って再び練習に入る。
だから今日の夜がチーム最後の1日なのだ。

夕食はクローズディナー。ようは閉会式だが、あまり長いスピーチはなく、カジ
ュアルな感じで行われた。けどいちおうキチンとした格好で出席。そこにピータ
ーケン一家が来ていた!!久しぶりの再会で沸く私達。ちなみにこの一家の
夫婦、ディーンとリンは私が迷子になった時の第一発見者なのだ。しかも2人
とも当時レーススタッフでたまたま仕事が終わって2人でコーヒーでも飲みに行
こうと移動している時に偶然私がホテルの場所を聞こうとして声をかけて無事
に発見された!という経緯なのだ。

後から私を迎えに来たコックス氏に聞いたら「ディーンはトラックのニュージーランド・チャンピオンなんだよ」って・・・ええ!!
そんな大変な人に助けてもらっちゃったのか!また、やってしまったあ。しかし、その後、気さくに面倒を見てくれて住所を交
換、毎年クリスマスカードは必ず送っていたので近況はお互い知っていたのだ。

リンには2人目の子供も出来てすっかりお母さん(以前はニュージーランドの女子ナショナルチームをマネージメントしていた
)。ディーンも元気そうだ。一緒にいたオバチャンがいたので挨拶しつつ「えー、どちらサマです?」と聞いたらコックス氏の奥
様だった!しかもリンが、私達が知り合った経緯を話したらウケる、ウケる。また・・・やっちまった。

ピーターも来て皆でワインで乾杯!和やかに食事。その最中にも知った顔にイジられる私を見て成田サンが「フジノさんっ
て、ホントに現地の人、よく知っているね」といわれる。うーん、正確に言うと「知れてしまった!」というべきか?!
その後も結構な量を飲んで良い気分、まったりとしながら最後の夜を過ごした。

3月11日(月曜日)曇り。

今日は帰国日。・・・ニュージーの日程が短かったのが唯一の不満。ブー。
朝バタバタしてしまい荷物を慌てて積んでいたらオランダチームのバン・ポッペル監督に「ウイ、ウイ」とバタバタするオイラを
からかう。うううう。私で遊ぶなあ!!

とうとう帰る時間。ピーターが送りに来てくれる。やっぱり泣いてしまう。もっとこっちにいたかった。今度はもっと日本選手を
連れてくるからね!以前の参加メンバーも連れてきたいな。ピーター、元気でいてね!!そしてありがとう!!!

オークランド空港に着いても何か沈んだ気持ちになっていた。ヘンな不安もあった。そして・・・またやっちまった。
加南チャンから預かった決戦ホイールを置いてきてしまったのだ!!ああああ!バカあああああああ!!
すぐにコックス氏に電話「すびばせーん!!又やっちゃいました!!」って泣きついたら「また、何?」だって。すいません。
スグにホイールは確保出来、後日日本へ送ってもらうことになった。加南チャン本当にごめんなさい。そして最後の最後まで
迷惑かけて、コックスさん、ごめんなさい(号泣)!!

シドニー空港で、とうとう成田サンと唐見チャンともお別れ。最後に3人で空港でゴハンを食べる。唐見チャンはちょっと不
安げな表情。いろいろあったものね、まずは疲れを取って気持ちを切り替えてからがんばっておくれ。
そして成田サンの素晴らしいお仕事には感謝しかありません。本当にありがとうございました。私のようなスチャラカなマネー
ジメントに文句を言わずにやっていただいて・・・スイマセン!

今回もホントにイロイロあったけど、回数を重ねる毎に今度はこうしよう!という目標が結実しつつある状態に乗ってきたと
思うな。すごく着実。それに毎回連れていっている選手が皆、積極的なコが多くて自分の中で「モノ」にして活躍してくれて
いるのがうれしい。今後、自転車の試合はもちろん、ソレ以外のことでもこの経験は貴重になっていくのだろうな。
だって、なによりも私が変わったのが、このオセアニア遠征だったのだ。これにはオセアニアの人たちが少しずつ日本選手を理
解してくれつつあるからだと思う。だからこそ今後も期待には答えていきたいし、その手助けもしたい。

私は羊サンの国・ニュージーでレースで迷子になったけど助けられた。その瞬間から自分の人生の迷子からも救われたの
だ。この感覚を1人でも多くの選手やスタッフに分かって欲しい。羊のココロは今でも私の中で微笑みながら生きている。

また、絶対、羊サンの所へ里帰りしたい。そう考えながら飛行機の窓を眺めたら成田の明かりが滲んでしまった。

おしまい(だけど来年に続く!!)。

追伸:ココまで読んでくれて三球照代。

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